ねじのゆるみとその対策

ねじのゆるみの定義について

ねじ締結体は、締付けによってボルトの軸部に発生している引張力(ボルト軸力)と被締付け物に発生している圧縮力(締付力)により一体化されている。これらの力は、ねじ締結体に外力が作用していない時は、互いにつりあっており、その状態における両者を総称して「予張力」という。
締付けの際にねじ締結体に発生し、保持されているはずの予張力が、機械の使用中に何らかの原因で低下することがある。このような予張力の低下を、「ねじのゆるみ」という。


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ゆるみの分類

戻り回転によらない場合

1)初期ゆるみ
表面粗さ等の微小な凹凸が締結後に時間経過や外力によりへたった場合ゆるむ。
2)陥没ゆるみ
接触部の面圧が高すぎ、接触部表面が塑性変形
3)微動摩耗によるゆるみ
接触部の内、特に被締付物の接合面が外力によってすべり、摩耗を生じてゆるむ。
4)密封材の永久変形によるゆるみ
ガスケット等の異種材料の密封材が用いられる場合、そのへたりによってゆるむ。
5)過大外力によるゆるみ
被締付物の面圧による陥没以外で過大な外力によりボルト自体の塑性伸び進行によりゆるむ。
6)熱的原因によるゆるみ
温度変化によりボルト軸力の変化が発生し高温でボルトが伸びた場合軸力が低下しゆるむ。

戻り回転による場合

1)軸回り方向繰返し外力によるゆるみ
ボルト軸線回りのモーメントが被締付物に作用し接触部が滑り、その上のナット又はボルト頭座部でも滑りが生じる場合に、ナット又はボルトが戻り回転してゆるみが生じる。
2)軸直角方向繰返し外力によるゆるみ
ボルト軸線直角方向の外力が繰返し作用する場合に接触部が滑り、ナット又はボルト戻り回転してゆるみが発生する。
3)軸方向繰返し外力によるゆるみ
ボルト軸線方向の外力が繰返し作用する場合、準静的である場合と衝撃的である場合の両方でゆるみが発生する。

 

ねじゆるみ試験

試験形式 説明
軸直直角振動 固定板と振動板とを試験ボルト・ナットで締結し、振動板に軸直角方向の外力を加えて振動変位させる。
変位は回転成分が入らない平行変位だけとする
軸周り振動 トルク式 固定板に対し振動板にトルクを加えてボルト軸の回りに回転変位させる。
変位は、平行変位を含まない回転変位だけとする。
加振式 振動板にアームを設けてその先に重りをつける。
固定板を振動台に載せ加振することで、回転変位を起こさせる。
軸方向荷重増減 ボルト頭及びナット座面にそれぞれ金具をあてがい引張試験機で軸方向の負荷を繰り返す。
衝撃 加振式 試験ボルト・ナットで締付けたねじ締結体を鉛直方向の長穴内に横たえ
(NAS式) 長穴の本体を振動台で上下に振動させ長穴の上下端で軸直角方向の衝撃を与える。
落下式 試験ボルト・ナットで二つの円筒を締付けた締結体を一定の高さから落下させ、
二つの円筒を軸方向に分離させるような衝撃を加える。
ハンマ式 固定体と衝撃受け板とを試験ボルト・ナットで締結し、
衝撃受け板にハンマ振り下げによる軸直角方向の衝撃を加える。
 

ゆるみ止め対策

有効性 機能 適合例
初期ゆるみ対策 ばね圧力 皿ばね座金、ばね座金
陥没ゆるみ対策 面圧低下 高剛性平座金
戻り回転抵抗 機械的回り止め 溝付ナット、割ピン付ボルト
舌付座金、つめ付座金 (例:イダリング)
ねじ部密着度増加 タッピンねじ
コイル状インサート
戻しトルク増大 非金属インサート付戻り止めナット
(例:ナイロンナット、ナイロック)
全金属製戻り止めナット(例:Uナット)
フランジ付ボルト、ナット
(例:フランジナット・スカートナット)
プリベリングトルク形ナット
(例:タフロックナット、スペースロックナット
戻り回転防止 嵌め合い隙間除きの強制ロッキング ダブルナット
ハードロックナット
嵌め合い隙間内での固化、接着 嫌気性接着剤(例:ロックタイト)
接着剤入りカプセル付ボルト
(例:ケミカルアンカーボルト)

 

評価

A.戻り回転防止用は、予張力(軸力)の低下をほとんどゆるさない部類であり、戻り回転によるゆるみに対する性能が最も高いとみなされる。ただし、ダブルナットの場合、完全なロッキング状態(羽交い絞め)が与えられなければ、その性能は大きく落ちる恐れがある。(各種試験結果で実証済み)また、嫌気性接着剤も使用説明に基いた用い方をしなければ効果が発揮されない。 それらと比較すると、ハードロックナットは現段階では、最も効果のある締結方法と考えられる。
B.戻り回転抵抗用とは、ある程度以上の予張力低下は許さないもの、予張力低下の速度を遅らせるものが含まれる。この場合、確実性の程度は様々で、単にねじ締結の分解、脱落防止用となるものもあると考えられる。
C.初期ゆるみ、陥没ゆるみ対策用は、通常は戻り回転によるゆるみに対しては適さないと思われる。座面防止する機能が乏しいからである。

 

ハードロックナットについて

ハードロックナットは、分類としては戻り回転防止用にあてはまり、評価としてはダブルナット以上の高い性能を有するゆるみ止めナットに属している。各種比較試験については以下のデータがある。

1)軸直角振動試験
ドイツのユンカ-方式のねじゆるみ試験が有名で、ねじの緩みを評価する代表的な試験方法である。湘南工科大学が実験をしたデータあり。
2)軸回り振動試験
現在のところ試験データなし。
3)軸方向荷重増減試験
繰返し荷重におけるボルトの疲労に伴う軸力低下を測定する試験方法だが、試験データはなし。これは、鉄塔等の構造物に採用されている摩擦接合用高力ボルトの試験データはある。
採用例:鉄塔他の構造物に高力ボルトに代わってハードロックの採用。(NTTの鉄塔他)
4)衝撃試験
a.米国NAS3350及び3354規格加振試験が有名で、当社の社内規格にもなっている。
b.落下試験については、某製鉄所の社内比較試験データあり。
c.ハンマ-試験については、試験データはないが、多くの実績がある。
採用例:大型削岩機、ハンマーリング装置、油圧ブレーカ等で長年採用
5)ハードロックのゆるみ止め機能以外の大きな特徴
a.軸力に関係なく十分な締結が可能。(設定軸力の管理が可能) b.繰返し使用しても効果を持続させることが可能(ナットの金属疲労が起こるまで可能) c.どのような環境下にも対応可能(形状、材質、表面処理の組合わせが自由自在)
*参考文献:ねじ締結ガイドブック 締結編より抜粋